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第一章【天一】 とてもキュートでかわいいマロンちゃんがみんなに説明!

 ね、みんな! マロン・グラッセって知ってる?

 もちろん知ってるよね! そう、マロンこそ主人公! この世界の中心なの!

 ということで、今回はこのマロンちゃんがみんなにこの世界のことを教えてあげちゃうね!

 うん、そもそも“この世界”ってなにって感じだよね?

 世間一般ではここは“天国”または”天上の国“って呼ばれているの。マロンは普段この世界を“楽園”って呼んでいるんだけど……、まぁいいか。今回だけみんなに合わせて“天国”って呼ぶことにするね。

 マロンたち天上人が住むこの天国には、いっぱい素敵なことがあるの。

 年中お日様がぽかぽかしてあたたかくて、夜は穏やかな光に包まれるのよ。昼は甘い香りのきれいなお花が辺り一面に咲き誇って、小川が流れる場所には美しい森林もあるの。ね、この天国は素敵でしょ? マロンの大好きな場所なのよ。

「マロンちゃ~ん! 今日の出来たて、持ってきたヨ~!」

「サトウくん! わあ~おいしそう!」

 マロンの元に、二代目パン屋のサトウくんが出来たてのパンを届けてくれたの! サトウくんが作るパンは、と~ってもおいしいのよ! 特にマロンはサトウくんの作るクロワッサンっていうパンが好きなの。色はちょっとこげ茶色なんだけどね、ふわ~ってしてほのか~にあま~いの! サトウくんのパンは天国一よね!

「今日もありがと! サトウくん! 美味しく食べるね!」

「うんうん。ちょちょちょ~って食べてね! いや~マロンちゃんはいつも美味しそうに食べてくれるから、オレも嬉しいヨ!」

「だってほんとに美味しいんだもん!」

「うんうん。オレも、今新作のパンを作ってるんだよね。オレがまだ天使だった頃に行った地上で見たんだけど、フランスパン、っていうなが~いパンね。あれを作ろうと思ってさ~」

「美味しい? それって美味しいパン?」

「もっちろんさ! 待っててね、すぐにちょちょちょ~って作ってみせるから! 左右から同時に食べれるように、二股にするのが大変でね……う~んもう少し天術を調整しないとダメなのかな……」

 そういってサトウくんは去って行ったの。きっとパン屋に戻ったのね。サトウくんのパン屋さんはすっごく人気なんだから! 珍しくて、美味しいパンがあるって有名なの!

 そういえばこの天国の素敵なところって、美味しいパンがあるところもそうよね! う~ん、素敵な所が多すぎて全部は話せないかも……。

 それにね、美味しいパンと同じくらい素敵なことがあるのよ。え、知りたい? ん~どうしよっかなぁ……そうよね、今回はみんなにこの天国を紹介するのが目的だものね。わかった、そんなに知りたいなら教えちゃうね!

 この天国には地上っていう場所から運ばれてきた“魂”っていう存在があるの。

 

 

 その“魂”の運び手を“使者”って呼んでるんだけど、どうも地上では“死神”って呼ばれちゃってるみたいなんだよね……。別に神ってわけじゃないんだけど。変なの。

 この“使者”っていう天上人はいわば上級天使たちのことなの。え、天使ってなにか? そっか、みんなは知らないんだよね。天使っていうのは、天国のお仕事っていうのかな。唯一ある職業みたいなものなの。もちろんお仕事をしてない天上人もいるんだよ。

 それでね、天使には階級っていうのがあるの。一番下っ端の見習い天使は、準下級天使って呼ばれていて、準下級天使は下級天使になるために試験を受ける必要があるの。この下級天使を卒業することができたら、晴れて準中級天使になることができるの。

 準中級天使にも準下級天使と同じく試験が設けられていてね、やっぱり下級天使になるための試験より難しかったなぁ。あ、マロンは準中級天使ね。そして試験に合格して中級天使を卒業すると、晴れて上級天使になることができるんだ!

 この上級天使に試験はないんだ。でも結構厳しいお仕事ってきいたことがあるの。地上の“魂”を運んだ数と、その仕事の成果で点数が決まるらしいんだけど、最終的には特上天使っていう上級天使よりもさらにえらい天使からの推薦がないと特上天使にはなれないんだって。大変だよね~。うぅキンチョーする。マロンもいつかこの特上天使っていうのになるのが夢なんだ!

 

 この特上天使にも上と下があるみたいなんだけど、詳しくは謎なの。だーれも教えてくれないんだから! あ、それでね、特上天使がなにをするかというとね、神様とマロンたち天使の間を掛け持つのがお仕事なの。神様の御声をしっかりマロンたちに伝えてくれるんだよ。ほかにも天使の管理をしたり、昇級テストの試験官だったり、マロンのような準中級天使の特別顧問になったりしてくれるの。いわば上司だよね!

「もう時間ですわね、マロン」

「うっ……シベリア、さま……」

「新しい教材を取りに行ってきますから、それまでに復習していてくださいね」

 準中級天使で特別顧問が就くことは、実は滅多にないんだ。特上天使に落ちこぼれっていうレッテルを貼られた天使に付けられることが多いのが特別顧問。だから名誉なことでもなんでもないの。でも上級天使になったときに、監督してくれる天使が特別顧問だったりするんだよね。そう考えると準中級天使で特別顧問をつけられているほうが、知り合いだから特上天使になりやすいんじゃないかなって思ってるんだ。実際のところはどうかわからないけど、そうでも思ってない限りやってらんないもん。マロンはなーんにも悪くないんだからっ! 

 そうよ、どうしてマロンに特別顧問がいるの? すっごい不思議。マロンのどこら辺が落ちこぼれなのか特上天使に聞いてみたいところよ! マロンはこれでも怒ってるんだからね!

「そういうところが、特上天使様のお目に入ってしまったのですわ、マロン」

「……むぅ、マロンのせいじゃないもん。おなかがすくのが悪いんだもん」

「はいはい」

 見つかっちゃったから仕方なく残りのパンは口に押し込んだわ。だって残すなんてもったいないことできないもの!

 さっきからの声が誰かって? もちろんマロンの特別顧問だよ! 名前はシベリアっていうの。かわいい名前でしょ? マロンがはじめて会ったとき、ぬいぐるみが空飛んでるってびっくりしたのよ。見た目は本当にウサギのぬいぐるみなのよ。でもちゃんと羽もあって、天使の輪っかもあるの。だから天使だってわかったんだけど……。どうして見た目がウサギなの、って聞いたことがあるんだけど、はぐらかされちゃった。それからは、シベリアはこういった種族なんだろーなーって思うことにしてるの。みんなも深く考えないほうがいいよ。だってわかんないものはわかんないもん。

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