これで天使のお仕事の素晴らしさって伝わったかな? ……伝わらなくても大丈夫だよ! みんな天使になればわかるもの!
天国にはこんなに素敵な職業があるの。でもね、特上天使には滅多に会えないし、神様なんて遠目に見ることすら叶わないんだから! そうそう、神様に会うことが許されているのも特上天使だけなの。だからマロンは絶対に特上天使になるんだ! 神様ってすごい美人なんだって! 特上天使にも四大美人って呼ばれている天使がいるんだけど、それ以上ともいわれているらしいの。びっくりだよね! マロンには想像つかないよ~。
そういえば紹介し忘れてたよね? マロンのおバカさん。天使を語るならまずあの方たちを紹介しないといけなかったのに……。い、今から紹介するから許してね!
特上天使の中でも、すごく特別な天使が四人いるの。すっごく美人で、お仕事もカンペキで、それでいてとっても素敵な方たちなんだよ。マロンたち天上人はあの方たちを総称して、四大天使、または四大美人って呼んでいるの。四大天使の特上天使にはちゃんとファンクラブまであるんだから。マロンも勿論入ってるのよ。当たり前でしょ? 女の子にとっては必須事項なんだからっ!
みんなもファンクラブに入ることをオススメするわ。大丈夫、今からマロンが四大天使のことをしっかりこってりドバッと教えてあげるから!
「ほら、マロン。食べてばかりいないで、そろそろ勉強しなさい。もうすぐ昇級試験でしょう?」
「……は~い。わかったよぅシベリア……」
「ほらまたわたくしを呼び捨てにして……規定に違反していますわよ、マロン」
「はーいシベリアさま! だから点数引かないで! 報告しないで! ね、お願い!」
「でしたら勉強してくださいまし。先ほどから一行も進んでおりませんわ」
「ぬぅ……」
もう気づいてるとは思うけど、もうすぐ昇級試験があるの。
勉強だけはダメ。勉強する時間を食事に使いたいくらいよ!
頭を使うとどーしても、いつも以上にお腹がすいちゃってダメなのよね……。
ああ、ほらまたお腹が……ぐぅ~って……。
「シベリアさま、ちょこっとだけクロワッサン食べていい?」
「マロン! ソレをいったいどこから出したのです!? ……はぁどうしてそんなに食べても太らないのですか? わたくしなんて日々体重が……」
さっそくおいしいおいしいクロワッサンを食べていると、頭上から悩ましげなシベリアのため息が聞こえたの。最近新しい悩みでもできたのかな? この前は羽にシワが増えたって嘆いていたみたいなんだけど……。
「ハッ! も、もしかして、シベリアさまもクロワッサン食べたいの? ダ、ダメだからね! ここここれはマロンのなんだからっ!」
「いーえいりませんわ。早く食べてしまいなさい。その後はおとなしく勉強してくださいませね」
ん~やっぱり何度食べてもおいしいわ!
このクロワッサンはね、どれだけの時間が経っても出来立てと同じおいしさを保っているのよ! すごいでしょ? これも天使が使う天術ってやつの応用らしいんだけど……詳しくは知らないんだ。天術を習うことができるのは準中級天使からって決まってるから、マロンはまだ基礎しか習ってないの。きっと応用っていうぐらいだから、上級天術なんだろうなぁ……。
「では、マロン。この質問に答えてください」
「んーと……『天上人と地上人はどのように見分けるか答えなさい』……? あ、この間やったやつだよね! えーと確か、天上人は天使の羽と天使の輪っかがあって、地上人には羽も輪っかもない、んだよね! だから天上人と地上人の見分け方は、羽と輪っかがあるかないか! シベリアさま、正解でしょ?」
いくらマロンが勉強嫌いだからって、これくらい簡単なのよ!
自信満々に答えて、シベリアを見上げたの。そしたらなんだか怒って、る? あれ?
笑顔で褒めてくれるシベリアを想像してたんだけどなぁ……なにか違ったっけ?
「マロン? この間教えたばかりですわよ。天上人に天使の輪っかなんてありません!」
「へ?」
「いいですか、マロン。天使の輪っかがあるのは、天使になると決めたものだけです。準下級天使試験に合格したものだけが、やっと輪っかを頂けるのですわ。マロンも天使になる前はそうでしたでしょう?」
あれれ? そうだっけ? うーん……昔のことってよく覚えてないんだよね。ほら、マロンは過去を振り返らずに前だけを見てるからさっ!
「ですから天上人と地上人の見分け方は、羽があるかないかなのです。ではマロン。“魂”として運ばれてきた地上人と、地上に住んでいる地上人はどのように見分けるかわかりますか?」
「ええええ!? い、いきなり難しくない?」
えーとえーと“魂”は使者が、地上に降りて地上人を連れてきた存在のことで……だからまだ天上人にはなってないんだよね? 天上人になる前の地上人だから……あれ? どっちも同じ地上人?
「ど、どっちも同じだから見分けがつかない! ……ってことじゃないよね?」
シベリアが重々しく頷いてる。やっぱり違うんだ……。
天上人になる前の地上人でしょ……?
手元にある本をパラパラとめくり、なにかヒントになりそうな項目がないか探してみた。
あ、この間クルミちゃんが落書きした絵はっけーん! ……あれ? なんでマロンの本に落書きしてるの!? それにしてもこの人誰だろ……イケメンなのに素敵なお髭生えちゃってる……ちょっと台無しね。
「マーローンー?」
「っは、はい!」
「……わかりましたか?」
首を横に振る。そんなのわかるわけないよね……習ってないし。
「そうだろうと思いました。ではマロン。明日までの宿題ですわ」
気のない返事をして今日のシベリアとの勉強は終わったの。だからってマロンの勉強が終わったんじゃないのよ。
さぁこれからは四大天使様についての勉強会と会合よ!
シベリアが飛んで行くのを見送ってから、月に一度の会合に向かうの。
途中で同じファンクラブに入っている準中級天使のクルミちゃんと、下級天使のモモちゃんと一緒に向かうのよ。ふたりとはとても長い付き合いなの。
「やっほークルミちゃん、モモちゃん!」
「こんにちわぁ~マロンちゃん、モモ」
「お久しぶりです、マロンさん、クルミさん」
栗色のおさげでおしゃれでかわいいのがクルミちゃん。蒼い髪のショートでボーイッシュな格好をしたちょっぴりかっこよくて可愛いのがモモちゃんよ。
マロンたち三人は同じ時期にファンクラブに入った同期なの! だから会合がなくてもちょくちょく会って誰が一番素敵か話し合ったりするんだけど……。実はマロンたち三人とも一番好きな人が違うんだよね。だから実際は平行線で、口論して終わりになっちゃうことが多いの。でもやっぱりみんな素敵だから、結局は納得して帰るんだけどね。
四大天使の中でも、まずはジブリール様! ジブリール様はモモちゃんが一番好きな人なのよ。ジブリール様は男の人にも女の人にもとってもやさしくて、暖かくて、頼りになる人なの。どうやらモモちゃんは憧れの人でもあるみたいね。マロンも素敵だな~って思うけど、やっぱりミハエル様には負けると思うのよね!
ミハエル様は四大天使の中心的人物なのよ! とってもかっこよくて常にキラキラと輝いてるの! 圧倒的な存在感と、魅力的なカリスマ性が素敵ね! マロンはミハエル様を見た瞬間に恋に落ちたわ! ああ、これこそ本当の恋なのね!