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 次はアズラエル様かしら? アズラエル様はクルミちゃんが一番好きな人なのよ。アズラエル様の特徴といったらなんといってもあの素敵な声音よね! ミハエル様に恋してるマロンでさえ、アズラエル様に囁かれたらうっとりちゃうもの。うぅ~浮気なんてしたらミハエル様に嫌われちゃうわっ! 許して、ミハエル様!

 四大天使最後はイスラフィル様ね。イスラフィル様は四大天使の中でも一番年下でかわいらしいのよ。そこらの女の子よりも可愛いんじゃないかしら? でも噂だと、かわいいって言葉は禁句らしいわ。他には四大天使の中で一番男らしいって話も聞くには聞くのだけれど……。実際はどうなのかな。四大天使でも一番新しい人だからまだ情報が少なくてわからないことだらけなの。だから常にイスラフィル様の情報には目を光らせているわ。もちろんミハエル様の情報の次に、だけどね!

 さて、これで軽くだけれど四大天使のことがわかったかしら?

 四大天使ファンクラブ、『arcangel』会の会長はミハエル様の幼馴染であるマリク様なの。マリク様はとても気さくな方で、どんな子でもファンクラブの会員になれるのよ。けれどとっても規則には厳しい方だから、ファンクラブの規約に反した子は即刻罰則を与えることでも有名よ。みんなもファンクラブに入る時は気をつけてね!

「そうそう聞いたぁ、マロンちゃん、モモ。イスラフィル様って、実は上層階級のご出身だそうなのよぉ」

「え、そうだったのですか? てっきり私はジブリール様たちと同じ下層階級の出身かと思っていました」

「ほえ~それなのに仲いいんだね、ミハエル様たちって! やっぱりミハエル様素敵!」

「なにいってるのよぉイスラフィル様と一番仲良しなのはアズラエル様じゃない! つ、ま、り! アズラエル様が一番素敵なのよぉ」

「いいえ、ジブリール様は誰にでもお優しい方です。階級で差別などなさりませんから、ジブリール様が一番素敵なお方です」

 いつものように数秒睨みあって、フッと噴出した。

「こうして睨みあっていても意味がありませんね」

「はやくマリク様の所に行こぉ」

 ファンクラブ『arcangel』は白い建物の中にあるの。マリク様の所有されている建物なのよ。

 『arcangel』は中層階級の真ん中に位置しているの。マリク様が下層階級の人にも、上層階級の人にも気軽に来てもらえるようにってど真ん中に造ったって聞いたことがあるわ。本来なら勝手に領地にしたらダメなんだけど、上の人を説得したらしいわ。マリク様って本当に大胆よね。そのおかげでこうしてどの階層の人も気軽に集まることができるのよ。

「おう、やっと来たな! これで今回は全員かね?」

 マロンたちの到達を待っていたかのように、幹部の人がそう皆に声をかけたの。あの人ってとても仕事熱心って聞いたわ。クルミちゃんの情報だけどね。

「ね、クルミちゃん。今回集まった理由って、まさかアレなの?」

「え、マロンちゃん知らずに集まったのぉ? アホなの? バカなの?」

「ヒドッ! マロンはバカじゃないもん! 理由を知らなくても、会合があるなら参加するんだから!」

「……マロンさん。今日はファンクラブ三百周年記念になにを行うかという話し合いをするために集まったんですよ」

 そっか! あと五十日で『arcangel』三百周年だものね!

 二百周年記念にはミハエル様たちに感謝の意を込めて盛大な贈り物をしたのよ!

 会員全員が費用を出して、大きなお城を建てたの。マリク様やマリク様の彼女で副会長のベガちゃんが構造を設計して、幹部の人たちが手分けして建設したのよ。全てのお城が特別階層と呼ばれる階層に造られたわ。ミハエル様たちの個性をあらわした素敵なお城が完成したのよ。会員は一度だけそのお城を訪れることが許されているの。もちろんマロンはクルミちゃんとモモちゃんと、すぐさま訪問したんだから。とーっても感動したわ。あの光景は絶対に忘れないんだから。

「あれ、マロンさん。もしかしてあれは、特別顧問のシベリアさんでは?」

「え? シベリア? どこどこどこ?」

 モモちゃんの指し示す方には、確かにシベリアがいるわね。可笑しいわ、シベリアは『arcangel』の会員じゃないって言ってたのに……。なんでここにいるのかしら?

「隣にいるのはベガ様だよねぇ」

 確かに。シベリアと話しているのはベガちゃんだ! そっか、シベリアとベガちゃんって同じ特上天使だものね。知り合いでも可笑しくないんだわ。

「ならシベリアはベガちゃんとお話しに来たってことなのかな?」

「……私はマロンちゃんがベガ様をちゃんづけで呼んでることのほうが不思議ぃ」

「同感です。それにシベリア様のことまで……」

 もう、クルミちゃんもモモちゃんも失礼しちゃうんだから! マロンとベガちゃんは家がお隣通しの幼馴染なんだから当然じゃない。ベガちゃんが特上天使になったからって、早々態度なんて変えられないんだから。

「ちょっと行ってくる!」

「あ、こらマロンちゃん! あんたどこ行く気ぃ!?」

 どこって、決まってるじゃない! シベリアとベガちゃんの所なんだから!

「ベガちゃん!」

「へ? あ、マロン!」

 シベリアと話してるベガちゃんに声をかけると、驚いたようにベガちゃんが振りかえった。ああーすっごく可愛い! なんてかわいいの、ベガちゃん! ふわりとした金髪に蒼瞳が映えて綺麗な色合いを見せてる。こんなに蒼瞳が綺麗に映るなんてベガちゃんくらいだわ。こんなに可愛いベガちゃんを選んだんだから、さすがはマリク様よね。

「こらマロン。みなさんがいる前でベガと親しく話してはいけませんわ」

「もうっまたシベリアさまのおせっきょーなのー?」

「ふふ、マロンもシベリアも仲よさそうでよかったわ。マロンの特別顧問がシベリアになったって聞いたときはどうなることかと思ったもの」

 ああベガちゃん! どうしてベガちゃんの笑顔はそんなにかわいらしいの!? マロンもベガちゃんみたいになーりーたーいー! そしたらミハエル様と……ポッ。

「ま、マロン? 熱でもあるのです? ど、どうしましょうベガ! マロンが風邪を……!」

「……多分、違うんじゃないかしら。マロンって昔からこうなることがよくあったから」

 ミハエル様、ああ、マロンをもっと見て! その素敵な頬笑みをマロンに向けて!

「そうなの、ベガ? マロンったらいったいどうしたのかしら? 勉強のしすぎでついに頭が可笑しくなった……わけないわね。マロンったら勉強より食欲なんですもの」

「ふふ、そうでしょうね。マロンは食べることがだ―いすきだから。本当に昔から変わってなくて……少しうらやましいくらいよ」

「それってつまり、成長してないってことではありませんの?」

 マロンもいつの日か、マリク様とベガちゃんのような素敵なカップルに……ポッ。

「マロン、お願いですからそろそろ戻ってきてくださいまし。わたくしもベガも、困ってしまいますわ」

「……はっ! え、な、なに、シベリア?」

 マロンとミハエル様の至福の時を邪魔する声が聞こえたの。そしたら目の前にシベリアがいたからびっくりよ。そう言えばシベリアとベガちゃんに会いに来たんだっけ?

「マロン? 呼び捨てになってますわよ」

「うっ。こ、細かいなぁ」

 シベリアは最近やたらと説教ばかりする。でも理由は簡単よ。もうすぐマロンの昇級試験があるからなの。シベリアはその試験でマロンが失敗しないように、些細なことも注意してるんだってちゃんとわかってるの。わかってはいるんだけど……それとこれとは別だよね!

「めんどーだなーシベリアさまー」

「マロン、そんなこといったらダメよ。シベリアは仕事熱心なの」

 ありゃベガちゃんにも注意を受けちゃった。

 いけない、いけない。

「そうだベガちゃん。マロンすごいことを発見したのよ!」

 ああ、ベガちゃん! そんなに不思議そうに首傾げちゃって……いったい誰を誘惑してるの!? あ、マリク様か。

「地上にもね、実は天使の輪っかが存在したのよ!」

「ええ!? 本当?」

「もちろんよ。裏だって取れてるんだから!」

 ふふん、聞いて驚くといいわ、ベガちゃん! このマロン様が地上のことを丁寧に教えてあげるんだから!

「おい、ベガ! そろそろ始めんぞー!」

「あ、ごめんなさい! 今行くわ!」

 そういってベガちゃんを呼んだのは、ベガちゃんの彼氏であるマリク様だった。マリク様が呼んだってことは……そろそろ会合の話が本格的にされるってことよね。ああ大変! マロンは何も聞いてないのにっ!

「さ、マロン。ベガはこれから活動のお仕事のようですからね、マロンも早くお友達の所に戻るのですわ」

「はーい」

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